ADHDの26歳男性が外資系製薬会社に入った結果

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成人してから発覚した、いわゆる大人の発達障害というカテゴリーに分類される者です。 御多分に漏れず、様々な職を渡り歩き、そして数々の失敗をしております。が、何とか生きております。 ■人はおおむね自分で思うほどには幸福でも不幸でもない。肝心なのは望んだり生きたりすることに飽きないことだ。ロマン・ロラン

皆さん外資系製薬会社と聞いてどんなことを想像されるでしょう? 社内では英語の会話やメールが飛び交っている? 上司のことはボスと呼び、ロジカルでス マートな思考の社員ばかり? 内資系企業と比べ高額な給与がもらえる?社内文化は欧米式で個人・成果主義の厳しい世界? そんな世界にADHDである自分が入ってしまうとどうなるか? そんな謎ばかりの外資系製薬会社について赤裸々に語ってみようと思います。

 

〇 外資系製薬会社ってどんなトコ?

・ まず製薬業界について簡単に触れておきますと、日本は世界的に見てもその市場が大きく世界二位の市場と言われており、その規模は10兆円を超えています。そのような恵まれた市場において日本の名だたる製薬企業は世界でどの様な立ち位置かと言いますと、一番売上の大きい武田薬品ですらトップ10位に も入れないのです。ちなみに自分の会社もトップ10に入れない中堅どころの会社でした。武田薬品と比べるとちょっと上くらいの規模です。と言っても本社はヨーロッパにあり、自分は日本法人での採用だったの であまり会社の規模を感じることは無かったです。そして気になる外資系製薬会社の中身については、これから語っていきたいと思います。

・給与:まず一番気になるところ、給与ってどうなのか? という話。これは期待を裏切るようで申し訳ないんですが普通です。同年代でしたら、むしろ内資の上位製薬会社に勤務する方の待遇が良かったりします。これは自分が現地法人の採用だったからだと思います。本社採用になるとまた違うのかもしれません。

・ 英語:これは部署によっても違うかもしれませんが、基本的には営業だとチームリーダー、所長や恐らく支店長レベルでもそこまで使わないと思います。ただ同期には ハーフやら海外留学組や、或は大学時代に自分でビジネスレベルまで鍛えた方が1/3くらいはいました。本社からの連絡や社長のスピーチは英語なので、その時はだいたい同時通訳が入ります。使えなくても仕事で困りはしません。が、使えた方が良いです。自分の同期で留学経験のある女の子もよく海外の医療文献の翻訳等で重宝されてました。

・ 社内の体質:日本特有の慣習や意味の分からない体育会系文化とは無縁。外資系らしい個人主義で成果主義、クールでスマートで上司をボスと 呼ぶような風通しの良い体質だと思うでしょうか? 全然違います。思わず文字が太字になるくらい全力で否定してしまいました。外資系企業といってもウチの会社は日本法人で、おまけに営業。むしろごりごりの体育会系で、社内の飲み会も頻繁にありました。やれ上司に酒を注げ、面白い芸をしろ、場を盛り上げろ、とまあ、よくある日本の会社の風景そのまんまですね。おまけに酒が弱いので酩酊してトイレに行けば、だらしがないと殴られたりもしました。なかなかアレな職場だったと思います。更に仕事でも意見を言えば正しくても間違っていても新人が生意気だと言われるので口を開けなかったり。良くも悪くも企業体質は日本の多くの企業と大して変わらないかと思います。その割に人事制度は海外のそれと同じなので、あっさりとリストラにあったりします。そう考えるとウチの会社は海外と日本の悪いとこ取りの体質であった気がしてなりません。

・ 外国人の数:日本法人の場合は社長以外殆ど日本人だったと思います。ただ研修中にMBAを取得したアメリカ人が途中参加してきたり、同期にドイツと日本のハーフがいたりはしました。それ以外は日本人しか見たことはなかったです。

・ 社員は理系or文系?:仕事で扱うものが医薬品ですので、社員には大学で理系の分野、化学・薬学関係を学んでた人が多いのかと思えばそうでもありません。むしろ文系が圧倒的に多いです。薬剤師の資格を持ってる方もいましたが、数はそれほど多くはありません。仕事が営業で、尚且つドクター相手の仕事です。知識は相手が十分持っているので、それほど理系の素養は求められません。自分もそうですが大学時代は化学や薬学とは無縁の勉強をしていた社員がほとんどです。ですので製薬会社への就職は誰でも可能です。

・ モテるかどうかについて?:製薬会社、しかも外資系で横文字の名前。非常に聞こえが良いです。同業者や、医療関係者でも無ければ割と評判はいいように思えました。三割増しでエリートに見られます。特に地方配属になると給与ベースは東京と変わらないので、物価が安いとちょっとリッチな暮らしが出来ます。それで余計にモテたりもします。実際に地方配属の先輩方はバツイチ、人によってはバツ2バツ3の方なんてのも多かったです。同じく地方配属になった同期ですぐに外車を買ってブイブイ言わせている奴もいました。そんな感じで調子に乗る男が多いので製薬会社の男連中は同業者の女の子からは毛嫌いされていたりもします。 ただ個人の資質による差が大きいので、特に何にも無かった男も多いです。自分の場合は女の子と出会う機会がほとんど無い様な田舎の配属で、出会いの場は街コンに一度参加したくらいでしたので何の恩恵も感じられませんでした。

・仕事の厳しさ:体質は日本、雇用体系は外資。良いことはあまり無いです。スタイルは直行直帰型の仕事で朝は六時~七時から家を出て、夜は八時~十時くらいまでと拘束時間はかなり長めです。ただドクターと会うことが仕事なので会ってない時間は割と暇で自由です。仕事の密度は薄いです。一人で仕事を回り始めると、上司や他の社員の目も無い環境なのでかなり自由に行えます。大体どの会社も一人につき一台営業車が与えられ、モバイルルーター、ノート PC、携帯電話も配られるので、その気になれば車の中だけで仕事は完結できます。ですので営業所に殆ど帰らないようなことも可能です。サボっていても誰にもばれません。知り合いは平日にスノボに行っていたり、歯医者の予約を入れていたり、或は自宅に帰って寝たりする人もいました。厳しいか厳しくないかで言えば、同じ給与水準の他業種から比べたら随分ぬるい環境でやっていたと思います。ただ医師 相手、病院関係者相手の仕事は非常にストレスが多いです。

ちなみに上記見解はあくまで自分の私的見解に過ぎません。これを以てして全ての外資系製薬会社の体質として受け取らないようお願いします。最近は社員にiPad等を持たせて、社員の位置情報を管理しているような会社もあるの で昔ほどサボるのも難しくなっているかもしれません。自分もまだ医療業界で働いてはいますが、製薬業界とはまた違うジャンルなので恐らく状況は色々と変わっているとは思います。

 

〇ADHDの自分が外資製薬会社営業で働くとどうなるか?

・そんな外資系製薬会社で自分が働いてどうであったか? 端的に言いましょう。自分は全く上手くいきませんでした。太字で強調するくらい、これでもかってくらい上手くいきませんでした。では何がダメだったのか? それをこれから順を追って説明しましょう。

・まず製薬会社に入ると、新入社員は必ずMR(医薬情報担当)資格の取得が必須となります。12月にある試験日に向けて長い研修期間に入るのですが、この研修期間が曲者でした。ADHDである自分はまず、通常の授業形式で行われる座学の勉強が大の苦手です。まず授業時間内ずっと集中を保てた試しがありません。その為、毎授業行われる確認テストの点数の成績が最悪でした。研修期間のテストの成績は即ち自分の勤務評価そのものです。テストの成績が悪い自分は配属先の支店長、上司にも報告が送られ評価は最悪でした。

ADHDであることを当時は自覚しておりませんでしたが、ただその自分の特性には何となく気づいておりました。それまで、あらゆる受験も試験も短期過集中型の勉強で乗り越えてきたので、今回もそれで大丈夫だと思っていました。実際、最後の研修の合宿において、試験日最後の週の土日に不眠不休で全教科で数千問ある過去問を全て解きつくし、問題パターンを暗記。翌日の模試で全て合格点に達し、そのままの過集中状態で試験日に突っ込み見事合格を勝ち取りました。ただこの結果により、やれば出来るのに追い込まれないとやらない怠惰な性格と教育担当から評価を頂き、ADHDであることを知らない自分と配属先の上司はお互いにとって不幸な教育訓練を施されることとなってしまうのでした。

・研修が終わって正式に配属された先では、先の通り「追い込んだり、叩いたりして伸びるタイプ」との報告が送られていたようで、かなり厳しい方針で自分の指導が行われました。自分もADHDの特性っぷりを発揮して数々の失態を犯したのもそれに拍車をかけましたでしょう。まず寝坊をして遅刻してしまいました。これは前日に上司に付き合わされてお酒が入っていたのも大きかったのですが、えらく怒られました。また会議の間、集中力を維持していられず、そしてその時の顔がまた眠そうにしているように見えるため会議が終わると必ず呼び出され説教を受けました。ちなみに取引先の重要会議で支店長の真横にいて居眠りしかけたこともあり、会社人生の中で最悪の事態に陥ったこともあります…支店長からも取引先からも「いい根性しているな」と言われてしまい、心象は最悪になりました。これでも集中力が切れないよう、或は眠そうな顔に見られないようレッドブルを飲んだりボールペンで手の甲を刺す等いつも行っていたのですが、それらも全て無駄に終わりました。今では自分がADHDであると分かり、何となく納得もしていますが、当時は割と真剣に睡眠障害か人格障害を疑いました。

・また空気を読むのが劇的に苦手なので場を盛り上げるのが苦手でした。飲み会の席での上司や先輩方への挨拶、お酌など、言われるまで分からないので気づかいが足りないとよく言われていました。カラオなどでも盛り上げるのが下手くそと言われ上司から殴られもしました。ちなみに先に書きましたが、お酒が弱くて(ちなみに自分は下戸)トイレで吐いていたら引っ張り出されてだらしが無いと怒られたこともあります。ここまで書いていてお気づきの方も多いと思いますが、自分の働いていた会社は全然外資っぽくないです、どちらかと言えばただの地方にある営業所のスタイルを持つ会社です。

 

〇外資製薬会社を辞めるまで

・最後はもう本当にひどかったです。自分の今まで犯したミスの一覧を渡され、皆の前で読み上げさせられたりしたので、いい加減に限界にきて辞めました。入社してから10カ月目くらいの頃です。最後は有給を消化しつつ心療内科を受診しました。重要な会議で寝てしまったり、毎会議の度に集中力が続かないのは睡眠障害か人格障害か何かだと思ったためです。その時に受けた診断は適応障害でした。何か釈然とはしませんでしたが、その診断書を見せて会社に休職扱いにしてもらい、そしてその後退職しました。退職が決まった時は晴れ晴れとした気持ちでビールで乾杯しました。辞めたことは今でも全く後悔していません。

 

〇ADHDについての適職について考えること

・インターネット等にADHDに向いている職種に営業が挙げられているサイトが散見されます。これについてですが、少なくとも自分の経験から製薬会社営業は避けた方が良いと思えます。これについては自分の経験からでしか無いのですが、製薬会社の営業は空気や、暗黙のルール的なものを理解することが仕事の上で何より重要であると思います。そしてこれは発達障害者が最も苦手とするとこところだからです。特にこの業界はドクタ―を頂点とした絶対的ヒエラルヒーがかっちりと決まっております。非常に立場が低い中でドクターに会ってもらうには複雑で繊細な人間関係を構築したり、或は気配りが必要であり、それらは自分にとって行うことが非常に難しかった。何故訪問が規制されている病院に入り営業活動をして許されている人がいるのだろうか? 面会が順番待ちのはずの病院で何故あの会社の人はすっ飛ばして先生に会えているのだろう。毎週一回必ず面会して営業しろと会社から言われているドクターではあるが、毎週毎週ずっと会っていれば製品の話のネタは尽きてくる。それでも会って一体何を話せば良いのだろうか? とにかく複雑で目に見えないルールや不明瞭な垣根のルールが多すぎて自分は理解不能に陥り手に負えませんでした。

・仕事の理解の困難さ、そして上記のADHDの特性により犯したミスや上司、先輩による指導に耐えることが出来ず自分は退職してしまいました。しかし退職したことを全く後悔はしておりません。恐らくあのまま会社にいたとしてもいずれ精神を病むか、自尊心を擦り減らし死んだように生きるような日々になっていたと思います。幸い、仕事を辞めた後2カ月ほどで次の仕事が決まったおかげで経済的に困窮することも無く、生活は何とかなりました。転職先は前職での失敗を活かし、営業で無い仕事、そして曖昧なルールや空気、人間関係が仕事にあまり関わらない仕事という軸で選び、そして見つけた臨床試験の受託会社に転職しました。ここでの仕事は試験の実施から医療機関の対応まで行う試験担当という職種でしたが、試験は最初から最後まで行うことがプロトコルによりしっかり決まっていたため、仕事が行い易かったです。医療機関への対応も試験の実施という目的がはっきり決まっており、慣れればドクタ―の対応も関係者への対応も割と簡単に出来ました。中小企業ということもあり、その辺の仕事がぬるかったということもあるかもしれません。

・結論から言えば、自分は外資製薬会社を辞めて正解でした。明らかに自分の能力で遂行できる仕事の枠組みをオーバーしておりました。その中で自尊心を擦り減らして仕事を続けていても何も意味は無かったと思います。三年は石に噛り付いてでも同じ会社にいろと人は言いますが、あれほど無責任な言葉は無いようにも思えます。そもそも最初の時点で自分の特性と合わないのであれば早めに自分に合った仕事を見つける転職する方が会社にとってもその人個人にとっても失うものが少なく、メリットの方が大きいように思います。特に自分の様なADHDを含む発達障害の方々にはそう思います。

・もし、これを読んでいる方の中で今の仕事が合ってない、又は仕事で苦しい思いをしている方は転職する勇気をもって下さい、貴方にとってもっとやりやすい、そして向いている仕事は他にもあります。もっと自信をもって下さい。きっとその方が貴方にとってより良い人生になると思います。

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d_sakag
成人してから発覚した、いわゆる大人の発達障害というカテゴリーに分類される者です。

御多分に漏れず、様々な職を渡り歩き、そして数々の失敗をしております。が、何とか生きております。

■人はおおむね自分で思うほどには幸福でも不幸でもない。肝心なのは望んだり生きたりすることに飽きないことだ。ロマン・ロラン