厚生労働省の発達障害向け職業訓練は役に立つのか?


はじめまして、発達障害の当事者であるウマイボーと申します。

今回私がお話したいのは、厚生労働省が主催している発達障害向けの職業訓練について。

詳しくは申し上げられないのですが、私は6か月間、発達障害の方を対象とした訓練を受けた経験があります。
職業訓練とはいっても民間が主催するものではなく、市や県が運営している支援施設(職業能力開発校)などで行われるものです。

これは発達障害者向け就労支援事業の一環であり、訓練中は当然失業手当を受給することも可能です。
行政が主催ということで、一見非常に優れたプログラムのように思えますが、こういったものの実態は中々よくわからないもの。

そこで、私が実際に受けた訓練の内容を紹介し、これが一体どの程度役に立ったかということをお話したいと思います。私の体験が、皆さまのご参考になればと願っております。

見学会&選考試験の内容

ハローワークにこの訓練を受けることを申告すると、時期によっては見学会への参加を促されることになります。
これについては割愛しますが、職員さんにはいろいろと質問ができるので、気になっていることは事前にメモして準備をしておきましょう。

その後、指示された手順通りに申し込み手続きを行った後、選考試験へと挑むことになります、
選考試験の内容は、大体中学生レベルの算数や国語、そして面接です。
私が受験した時は、定員5名に対して7~8名の方が受験していました。
おそらく、定員割れということはあまり起こらないのでしょう。

となると、気になるのは選考基準についてです。
これは私の推測ではありますが、おそらく

「一日8時間の授業についていけるか」

「就労に対するやる気があるか」

「入所後就労できる可能性があるか」

の三点がポイントとなっているかと思います。

特に重要なのが、3番目です。
これは職員さんの話からある程度推測したに過ぎないのですが、あまりにも高齢の受験者は落とされてしまう可能性が低くないようです。
実際、合格した5名は私含めみんな10~30代前半でした。

ですが、不合格だからといって、そもそも受験基準を満たしていないからといって、落ち込まないでください。
その理由につきましては、後述します。

訓練施設の特徴

私が通っていた訓練施設の特徴は、職員の方々が一切”怒らない”ということです。
ミスなどに対しては、理論的に指摘を行い、追い詰めるような言動は決してしません。
こちらの体調や心の具合は、無理をせず休ませてくれます。

また、こちら側の要望や考えていることに対して、常に気を配っているようで、
「何かあれば言ってほしい」といつでも質問を待っていてくれています。

とにかく、当事者の自主性やメンタルにできる限り任せようとする姿勢が見られました。

訓練内容

・トイレットペーパーの交換
施設内ほぼすべてのトイレットペーパーを交換します。
最初は訓練生全員で行いますが、一か月ほどで担当者二人がローテーションで行うこととなります。
交換の際、声掛けや照明のスイッチオンオフ、在庫数の記入など細かいルールが定められていますが、
分かるまでしっかり教えてくれますし、急かされることもほとんどありません。

・パソコン実習
午前と午後、二回行われます。
午前は十分ほどのタイピング練習。
午後はワードやエクセルを使った資料作成の練習です。
分からない場合もつきっきりで指導してくれます。

・ビジネスマナー講習
基本的なビジネスマナーについての学習です。
面接訓練などもあります。

・生活習慣講習
バランスの良い食生活や、生活リズムの改善などについての学習です。

・ストレス対策講習
ストレスを貯めない方法などに関する学習です。

・職場体験
企業などに赴いて、簡単な仕事を手伝います。
例えば、公共施設の簡単な掃除や小型部品の製造、資料綴じなどの事務補助作業です。

良かった点

作業が上手くできたりした時は、ちゃんと褒めてもらえたことです。

また、職場体験などで、普段入ることすらできないような施設で仕事ができたり、
大企業の特例子会社で作業の手伝いができた時は、非常に特別な体験をした気分になりました。

気になった点

まず、修了後の斡旋がないことです。

もちろんその点について事前に説明は受けていましたが
その代わり、「訓練校だけに送られてきている求人がある」と伺っていたので、
多少は期待していました。

ところが、その求人というのは、かなり給与の安いアルバイト一件のみ。
少々がっかりしてしまいました。

また、発達障害向けの職業訓練ということで、さまざまな方が一緒に訓練を受けていらっしゃったのですが、その中には、
自分の言いたいことだけを大声で発言したがる方や、突然怒り出す方など、少々周囲とのコミュニケーションが苦手な方もいました。

大変勝手な言い草ではありますが、上司からのパワハラによって退職してしまった自分にとってこうした環境はかなりしんどく、
ストレスになってしまったのは事実です。

後、これは転職活動をしていた際に感じたことなのですが、公的機関と言えど、この訓練について企業はあまりよく評価してくれていない気がしました。
どんなことをやって、どんな成果を出したか話しても「ふーん」程度のリアクションをされてしまうことがしばしばでした。

訓練の最終目標としては、当然障害者枠での就労であるはずなのですが、それに関する取り組みも非常にお粗末です。
一応、就職対策講座なるものも実施されるのですが、その内容はどこかの就活本に載っていそうなありきたりなものばかり。

もちろん、企業などの情報も入ってきません。
就職の専門家であるハローワークと連携しているはずなのに・・・。
若年者ならまだしも、職歴等に問題のある当事者が、厳しい障害者枠(一部のパート除く)での選考試験を勝ち抜くには、かなり不十分な支援ではないかと思うのです。

一応、体験先の職場から声が掛かって引き抜かれた方もいるらしいですが、これはかなりのレアケースではないでしょうか。
私が実際行った職場は、ほとんど人が足りているような状況でした。

おそらく、引き抜かれた方の時は、偶々人手が足りない幸運な状況だったのでしょう。
もちろん、「絶対にない」とは言い切れませんが、これを目当てに訓練を受けるのは、少々無謀だと言わざるを得ません。

そして、もっとも気になったのは、修了後の定着支援がないことです。
定着支援というのは、当事者が就職した後も企業との間に立って問題解決を図るなど、しっかりとそこで働けるようサポートをしていく取り組みのこと。

予算や人員の面を考えれば仕方ないことなのでしょうが、なかなか一つの会社に定着しづらい発達障害当事者にとって、これはかなり辛いのではないでしょうか。

結果として、役に立ったどうか

これに関しては、「人それぞれ」と言わざるを得ません。

例えば、これまでのつらい経験によって、就労移行支援事業所ですら通うのがしんどくなってしまった人にとっては、
基本的な生活習慣まで見直してくれるこの訓練は、かなり役に立つかもしれません。

ですが、僕のような「正社員、せめて契約社員の障害枠に・・・」という方にとっては、かなり物足りないかもしれません。
おそらく、一度でも社会人を経験した方にとって、この訓練の内容は非常に簡単なものと感じられるでしょう。
だからこそ、成果が実感しにくいのです。
面接で、会社側を納得させる説明がしづらいのです。

訓練を受けていた参加者の内何人かは、正社員や契約社員の内定を獲得していましたが、いずれも年齢が若かったり、
以前一つの企業に長く勤めていた方で、私のような短期離職を繰り返している30歳の人間は、障害者枠のパートで内定をもらうことが精一杯でした。

個人的には民間施設がオススメ

これは訓練修了後に聞いたことなのですが、民間の就労移行支援施設は、かなり内容が充実しているそうです。

大手施設のHPをちらりと見るだけでも、転職関連の企業による実践的な就労対策や専用の応募書類作成、そして就職後の定着支援など、
多種多様なサービスをウリにしており、就労の実績もしっかりと公開しています。

また、訓練が終わって数週間後の企業説明会で私を勧誘してきたとある施設は、企業との直接コンタクトによって豊富な斡旋先を持っていることを
自慢していました。
最終的にその勧誘を断ったので、本当にそこが豊富な斡旋先を持っているかどうかは分かりませんが、一部の民間施設が
そうした点を”強味”としているというのは伺い知ることができます。

もちろん、こうした取り組みは施設によってピンキリであり、場合によっては就労支援とは名ばかりの無意味な施設もあるようですが、
大手就労移行支援施設はハローワークのそれと比べ、大きく勝っているように思えます。
本格的かつ実践的な支援を受けたい方は、やはりこうした民間の大手施設への入所を検討した方がよいかもしれませんね。

また、様々な理由から選考に漏れてしまった方も、それほど悔やむ必要はありません。

近年発達障害の就労が取り沙汰される中、それに合わせて民間の就労移行支援施設も多数登場しており、支援の受け皿は充分にあるからです。
「公的機関」にこだわらず、さまざまな民間施設を見学し、自分に合った所を探していく方が、ずっと良い道が開けると思うのです。

少なくとも、6か月の訓練を終えた後で私が思ったことは、「他の施設も検討すればよかった」ということです。
「民間施設なんて」とバカにして、ロクな情報集めもしなかったため、大きな失敗をしたなと今でも思っています。

就労移行施設は、今後の人生を決める重要な要素の一つ。
視野搾取に陥ることなく、支援者と相談して幅広く検討しましょう。

text by ウマイボー