【答えを求めて】

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naomi-h

在英のフリーランス通訳・翻訳者です。教育、福祉、医療、メンタルヘルスを得意分野としています。イギリスでの「発達障害」に関する話を、自分が見聞きした経験を元に書いて行きたいと思っています。

2004年5月のある放課後、私と当時5歳だった息子は「アリス」」の自宅へお茶に呼ばれました。

今から思うと、付き合いがまだ浅い私に対して、自分の子供に関する懸念を具体的な例を挙げながら一人でしゃべり続けていたのは、彼女自身の中で「もしかしたら何等かの問題があるのかもしれない」という疑いが芽生え始めていて、それを第三者に「大丈夫だよ。よくあることだよ」と、不安を打ち消してもらいたかったのかもしれません。

ここで、【発達障害】のお子さんが受けられる支援の仕組みを理解して頂くために、イギリスでの医療システムの流れを簡単に説明します。

イギリスの医療システム

医療は国民保険制度の元、基本的な治療は全て無料です。

手順としては、「GP(総合医)」というホームドクターに登録し、歯科以外の疾病は、このGPへまず行かなければならず、そこから必要に応じて専門医へと紹介されていきます。                              そして、この「GP(総合医)」が行政の支援も必要であると判断した場合は、諸機関と連携して福祉、民生、教育それぞれの専門分野での適切な援助を受けられるように、段階を踏んでの手続が取られます。

また、イギリスでも出生後、定期的に成長の過程を図る検診システムがあります。  【発達障害】が疑われるお子さんは、2歳から5歳の間に2回ある検診において見極められることが大半ですが、「【発達障害】である可能性は無きにしもあらず、でも【発達障害】だと診断を下すには必要条件が全て揃っていないので‘要観察’」のボーダー上にいるお子さんも多く存在し、後々の学校生活を送っていく中で改めて【発達障害】であると診断を受ける児童も少なからずいるようです。

また【発達障害】でも、「自閉症」だと「特別支援教育認定」を受けられるのですが、「アスペルガー症候群」ではこの支援教育認定がおりにくい、「ADHD」では「特別支援教育認定」は受けられないというのが現状です。

なぜ、同じ【発達障害】で受けられる支援に格差が生じるのか、これらに関する話は、また回を追って実例を紹介しながら書いていきたいと思います。

学校での問題行動

さて、ある日のお迎え時「アリス」は担任教師に呼びとめられました。

担任の話によると、その日の朝、「アリス」の息子さんは、列の先頭に立てず2番目になった為、パニックになり泣いて暴れて大変だったとのこと。

担任は、彼をまるで我儘な駄々っ子の様に扱い、それが【発達障害】により引き起こされたとは知る由もなかった「アリス」は彼を叱りました。

また、あまりにもひとつの事に集中する為、トイレへ行くことを忘れ、学校でも失敗するようになってしまい、その度に息子さんを叱る「アリス」の姿を覚えています。

おそらく、その頃からではないでしょうか、「これは、ただの成長の遅れではなく、もしかしたら【発達障害】かもしれない」。そんな言葉が彼女の口から出るようになりました。

発達障がいの疑い。しかし支援は受けることができず

「アリス」夫妻はGP(総合医)を介して、専門医に息子さんを診てもらいましたが、【発達障害】には十分な条件を揃えていないボーダー上にいるという診断がその時点で下り、学校での支援を公的に頼むことが出来ない為、あとは学校側が独自にどれだけ協力してくれるか次第だという状況に立たされました。

しかし、スピーチの遅れ、バランスコーディネーションの悪さこそ目立ちましたが、読むこと、計算においての能力が突出している息子さんを学力面だけを基準に判断してしまった担任教師は、彼に【発達障害】、或はそれに近い可能性があると見極めることが出来ず、学校内での「特別支援教育」担当とも連携することもなく、息子さんへの適切なサポートはなされないままでした。

最終的に、「アリス」ご夫妻は、この学校では息子さんに必要な理解と支援を受けられないと判断し息子さんを転校させてしまったのですが、残念ながら、そこでも長く落ち着けず、また転校することになりました。

余談ですが、その翌々年、この担任だった教師は、その年に受け持ったクラスの「自閉症」の児童、「ADHD」の児童に対しての教育指導の不手際により解雇され学校を去って行きました。(続く)

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在英のフリーランス通訳・翻訳者です。教育、福祉、医療、メンタルヘルスを得意分野としています。イギリスでの「発達障害」に関する話を、自分が見聞きした経験を元に書いて行きたいと思っています。